もちろんDaichiです。
この挨拶をあとどれくらいするのだろうか。
もし「Daichiです」ではなくなったときは、このお店が無くなるときか、新入社員が入社した時かと。後者になるように気張っていきたいと思います。


当店をご存知の方はすでに把握していることと思いますが、STOTELAで取り扱ってるTシャツって9割が無地Tなんです。バイイングした当の本人もびっくりしております。
お店に陳列するとまぁ〜シンプル!

次は柄物やプリントTを増やそうと思っていますが、おそらく次も無地でしょう。
10代の頃に”学習能力”というものをどこかに忘れてきたからしょうがないんです。カバンの中も机の中も探したけれど見つからなかったんです。

それはさておき。
無地Tって色々と難しい。
スタイリングは全く難しくないんですが、販売をするにあたり説明が難しいんです。シンプルだからこそ”糸・縫製・編み・パターン(型紙)”で差がでるし、それを説明できないと「安価なTシャツでいいじゃないか」ってなります。

デザインTシャツでしたら、
「このプリントがいい」
「柄が可愛い」
「形がどことも被らなくてかっこいい」

となるので、詳細説明はちょろっとでいい。デザインTシャツでしたら購入して着たときに周りの人からどこのTシャツか聞かれますが、無地Tはほとんど聞かれない。
悲しい無地T。T)

でもそんなことどうでもいい。自分だけがその良さを知っていれば。
自分だけがその無地を愛してやるんだ。私は自己満足と優越感に浸りたいから無地Tシャツを、ミスっt…予想以上に仕入れております。

というわけで、当店の今季入荷した無地Tシャツをご紹介させてください。
もちろん全てそれぞれに特徴がありますが、全部ご紹介するとこのジャーナルがパンクするくらい文字数が多くなるので、今回はTシャツ2型と、それぞれの特徴を3つほどご紹介させてください。


まずはOLD JOEよりこちらのTシャツを。


特徴1:空紡糸(くうぼうし)

空気紡績糸の略で空紡糸です。
空気の力を利用し紡績をした糸で、オープンエンド糸とも呼ばれます。
外側は不均一な長さの繊維で撚られ、中は空洞になっています。

  
こんな感じです。まさか糸の撚り具合を手書きで説明する日がくるとは。
ざっくりと撚られるので太番手になるということと、凹凸によるシャリ感で吸湿性と速乾性に優れ、クラシカルなTシャツの粗野な表情になります。
アメリカの高オンス(厚手)Tシャツはほとんどが空紡糸です。

内側はほぼ撚りがないので弱いという意見と、太番手で厚手なので強いという意見に分かれたりもしますが、私の個人的な経験からすると”強い”です。
まぁ、コットンによりけりですが、私が着てきた空紡糸のTシャツは何年選手ばかりです。手放すときは酔って派手に転び破けた場合やシミを放置し過ぎた場合くらいで、普通に着用していれば長く着用いただけます。
  

特徴2:フラットシーマ

60年代にアメリカのユニオンスペシャル社が開発した、平面での縫製を可能にしたミシンです。

フラット(平面)、シーマ(縫製)

4本の針で縫製することで肌に当たる裏側の縫い代が平面になり、縫い目の肌触りが良く、下着やスポーツ水着などに使用されています。

【フラットシーマ】

【オーバーロック】

  
この写真で違いが伝わればいいのですが。
フラットシーマは縫い手からすると非常に扱いづらく、通常よりも縫い糸と時間を要します。
直線はなんとか私のような者でも縫えるのですが、カーブがもう…
結果、工賃はどうしても高くなるので店頭での価格もアップしてしまう。そんな縫製内容です。

  

特徴3:バインダーネック

下の写真をご覧ください。

  
ネックは一般的に二種類の縫製に分けられます。
”オーバーロック”と”バインダー”です。

今回入荷したOLD JOEのTUBE TEEは後者です。
バインダーネックは身頃を挟み込むように襟をつけます。さらに2本針のミシンで縫うことで先ほどの”フラットシーマ”同様に縫い代を平面化します。

縫製工程は増えてしまいますが、縫い目の肌触りがよくなることはもちろん、オーバーロックの襟付けより襟伸びがなくなる分、襟がヨレることがなくなります。

強いて欠点をあげるのであれば、縫い目が表に見えてしまうということです。
気になるほどではないのですが、どうしても気になるという方にはオーバーロックでの襟付けが施されたTシャツをおすすめします。


お次はULTERIORよりこちらのTシャツを。

特徴1:スビンコットン
  
インドの希少性が高い超長綿です。以前ジャーナルでご紹介したエジプトのフィンクスコットン同様に世界の高級コットンの一種。
※フィンクスコットンに関する過去のジャーナル

スビンコットンは、というより超長綿は繊維が細く長いため、高密度に編むことができシルクのような光沢と美しいドレープ性がある生地をつくることができます。

そんな超長綿の一種であるスビンコットンは、他の超長綿と比べると繊維の耐久性が高くため、甘い撚りでも糸として成立します。
撚りを強くする(強く捻る)ということは糸が強くなるが硬くなる。
この原理で考えるとスビンコットンは撚りを甘くしても強度があることと、糸の柔らかさをそのままに生地をつくることが可能ということになります。

そんな高級コットンをULTERIORは”またも”贅沢に3本撚りにしているのです。
これはフィンクスコットンのときもそうでした。
相変わらず、贅沢なこと山の如し。
着用画像をご覧ください。

  
3本撚りなのでほどよく厚く、シルキーな光沢、ドレープ性。贅沢三昧から生まれた一着です。
ちなみにスビンコットンを育てる地域は干ばつやサイクロンが発生する地域かつ地球温暖化もあり、年々生産量が下がっているのだとか。そんなコットンを3本..yori..

  

特徴2:天地縫い
  
裾や袖の縫製方法です。”裾引き縫い”とも呼ばれます。
裾・袖の縫製方法で一番多く見かけるのは”平縫い”です。平縫いは2本針で縫うため二本のステッチが表に現れます。

天地縫いと平縫いの違いがわかる写真をご用意しました!


そうです。またも絵です。
  
…というのも天地縫いは表に出てくる縫い目が見えないのが特徴で、実物写真が非常にわかりづらかったので、よりわかりづらいであろう私の絵をご用意しました。
天地縫いのステッチのピッチ目は上から下に走っているような、そんな感じです。
  
実は昨今のビンテージTシャツブームでこの天地縫いが多くの人に注目されています。アメリカのビンテージTシャツに天地縫いが多いからとのこと。
ただ現在ではこの裾引きミシン(天地縫い)がほとんど使われなくなり、職人さんも激減しているので今では貴重な縫製技術となっています。
その天地縫いでULTERIORのTシャツは縫われています。

  

特徴3:オーバーロック付け襟
  
先ほどOLD JOEのTシャツとは違う縫製です。
表にステッチが見えるバインダーネックに対し、オーバーロックは表にステッチが見えないので、表面を美しく仕上げることができます。
  
欠点は縫い代が立ってしまうことと襟伸びが発生しやすいことなのですが、こちらの写真をご覧ください。

  
襟伸びを防ぐために同生地のテープで抑えています。タコバインダーと呼ばれる処理です。
伸び止めの役割がメインではありますが、結果的に縫い代が肌に当たるのを防いでくれます。
バインダーネックは工程数が多いと先ほど記述しましたが、こうなってくるとほぼ工程数が一緒という心地よい理不尽さ。いいですね〜
  



本日のまとめ


①OLD JOE ”TUBE TEE”
・タフで肉厚な素材
・クラシカルで無骨なデザイン
・耐久性の高い縫製

②ULTERIOR “SUVIN SUEDED TENJIKU TEE”
・柔らかな素材
・ドレープ性あるモダンなデザイン
・シームが隠れた美しい作り

無地Tといえど、こんなにも違いがあるんです。そうなってくるとどれも着てみたいと感じ、気づけば無地Tだらけです。クローゼットも店頭も無地Tだらけになってしまいました。

その結果、「どのTシャツがおすすめですか?」という質問にいつも頭を抱えます。
どれも全然違うんだなー、これが。
もっと本音を言うのであれば、
どれも買って違いを体感してほしいんだなー、これが。

ここまで読んでくださった方が何人いるのかは不明ですが、いかがでしたでしょうか?
Tシャツ2型の説明でこんなにも長文になってしまっています。
  
もちろんSTOTELAには他にもまだまだ無地Tがあります。これをしっかり説明するとなると、お客様が憂鬱になるほどとても長い接客になってしまうので、簡単に要点だけを説明することになります。そうなると冒頭で記述した「安価なTシャツでいいじゃん」現象になる。

いやー、改めて難しいですね、無地Tシャツ。

ただ、素材本来の味をストレートに感じられるアイテムこそ無地Tの醍醐味だと思っています。
三着くらい購入してその違いを噛み締めてみてはいかがでしょうか?

誰からも羨ましがられることもない。
誰からも聞かれることもない。
誰からも振り返られることもない。

納得して、満足して、優越感を感じるのは己のみ!それでよし!!


毎度お馴染み、乱筆乱文で申し訳ございません。
それでは、店頭でお待ちしております。

投稿者|Daichi